おしえて兄さん

・シャンバラ軸のエドワード×アルフォンスの
エロ小説本です。
・解釈まだあやふや。エロが主題。
・攻めのフェラあり。
・頭を空っぽにしてお読み下さい。

 

 

 

 

 

摩擦音とくぐもった吐息が部屋に漏れる。控えめに、時おりぴくぴくと肩を震わせて感じ入り、アルフォンスは自身のペニスを扱いていた。

 

こんなことを覚えたのは精通して以降だ。精通は、兄エドワードが失踪してから改めて修行のために、イズミ・カーティスの家で暮らしていたある日の朝であった。
起床すると、下着がべっとりと濡れていた。肌に張り付き、分泌されてから時間が経ってひんやりと体温を奪う生々しい体液の感触と、独特の臭気が、知識の中にはあった精通や夢精、といったものと結びつくには少し、気持ちの整理が必要だった。混乱し、快いとは言えない感覚に冷や汗を垂らしながら自分なりの処置をしようとしたが、勘の良いイズミに隠し通せるはずもない。
イズミは特に詮索することなく、こういった時の洗濯にはタンパク質の凝固を防ぐため、熱湯ではなく常温の水を使うのだと教えた。
頭が真っ白のまま慌てて湯を掛け、ごわごわの再起不能にした下着をくず入れに包み、アルフォンスは情けなさと罪悪感でいっぱいになっていた。体液が熱凝固することなど、普段のアルフォンスであればすぐに考えが回ることであったし、こんなプライベートなことに師を巻き込むことが申し訳なくて仕方なかった。
気づけば、何に向けるでもない謝罪が口をついていた。
「ごめんなさい……」
「謝る必要がどこにある。気にしなくていい。生理現象だからな。それより、謝るのは私の方だ。もう、身体はそんな歳だったな……。お前にも、もっと早く教えておくんだった」
少し遅い朝食を終えるとイズミは、一冊の本をアルフォンスに渡した。
「大人の体を知るために必要なものだ。今日はゆっくりこれを読みなさい」
その日の修行は早めに切り上げられ、午後は読書に費やした。そこには、成長による体の変化と男女の違い、そして赤ん坊ができて産まれてくるまでの過程が極めて淡白な筆致で、しかし詳細に事実のみが記されていた。いずれも人体錬成を試みた時に何となくは知っていた知識ではあったが、いわゆる「性教育」として系統立てて受け取ることは初めてのもので、特段の照れもふざける気持ちもなく真剣に読み進めた。

その中でも「マスターベーション」「オナニー」という語は初めて知る知識であった。
生理現象として朝起きた時に陰茎が勃ち上がっていることもあれば、そこに触れば敏感であまり触りたくないと思ったこともあったが、敢えてそこを自分で扱いて見ようとは発想になかったことであった。
自分で出しておけば、今日のような粗相も減るらしいと知り、アルフォンスはその日からオナニーを初めた。

 

それは、アルフォンスがミュンヘンに転がり込んで、エドワードと再会して二度目の旅立ちをして、一時的に身を落ち着けた小屋に来てからもう幾度目かのオナニーであった。何となく他の人に見せるものでもないと思って、エドワードの居ない時間を見計らって抜くことにしている。
しゅ、しゅと乾いた音を立てて、機械的に亀頭の根本を掴んで素早く、一定のリズムを保って扱き続ける。やがてむずがゆさが下半身にゆるくとぐろを巻いて、内ももの筋肉が引きつる。
「ふっ、ふう、ふ、ふ……」
乱れる吐息を噛み殺して、そろそろ近いな、と思って扱くスピードを上げる。今やよく知ることとなった、甘い、甘い痺れがやって来て、少し我慢してから、腹の底に力を込めて快感を解放した。
「はあ……は……」
このところは、なかなかエドワードと離れる時間が取れずに、溜まっていたものだから。精液は勢いよく飛び出して、ちり紙の中にとぷとぷと染み込んでいく。

ぼんやりとホワイトアウトした脳裏に浮かぶのは、いつだって金のきらめき。
金髪金眼の、実の兄がアルフォンスと目が合った時に見せる、ほころぶような、気遣うような。それでいていたずらを思いついた幼子のように、純粋でまばゆさを含んだふ、と笑ったときのような。
そんなまぼろしを浮かべて果てるのが、いつものお決まりとなっている。

出るものも出し切ると、気だるさに脱力してマットレスに横になった。
アルフォンスは、実の兄のことを恋愛対象だとか、ましてや女の子のように想っているつもりはまるでなかった。性愛の対象として見ている自覚もなければ、性愛と好きであるという感情の境目についても考えたことがなかった。
ただ、どうしてだか、果てる時に兄のまぼろしが思い浮かぶときにはいつも、陽の光に照らされるような暖かな気持ちがしていた。

気だるい腰でベッドに座り、ちり紙を遠投する。精液をたっぷり吸い込んで重みのある紙は狙いを外してぺち、と音を立ててゴミ箱のそばに落ちた。
それを拾うことすらわずらわしく思えて、下着も履かないままでベッドの上で大の字になる。窓から吹き込む暖かく湿った春の風に甘やかされて、それ以上動くことすら面倒になり瞳を閉じると、意識はすとんと落ちていった。

 

すぐそばで動く気配を察知して、アルフォンスは飛び起きた。冷えた心臓は早鐘を打ち、手汗がぶわり、と吹き出して、部屋への侵入者と目が合う。
「えっ! 兄さん、列車に乗って出かけてたはずじゃ……これは、あの、えっと……」
「あ、起きたのか。待ち合わせしてた教授が大学の講義忘れてオレと約束してたもんだからさ。突然にすっぽかしやがって……朝でやることなくなったからとんぼ返りで帰ってきたぞ」
侵入者、もといこの家の一時の主であるエドワードはのんきに答えながら、冷えた水分を含むちり紙を床からつまみ上げてゴミ箱へと捨てるところであった。
それを見てアルフォンスの頬にサッと赤みが差す。
「ちょっと、それは……!」
「窓開けながら寝てたら危ないぞ。暖かくなってきたからって、そんな格好だと風邪ひくぞ?」
エドワードは小言を言いながら窓を閉める。アルフォンスは辛うじてタオルケットで下半身を隠しながら、身を固くするしかない。そんな弟の動揺をまるで無視して、エドワードは続ける。
「晴れてるし洗濯するぞ。シーツと枕カバーも洗うから早くどけよ」
「ちょっと、出て行ってよ」
「何でだよ。ここはオレの借りてる家だぞ」
「それは、確かに……」
まっとうに言い返されて口ごもるアルフォンスを見て、エドワードは軽く頭を掻いた。
困ったなというように、んー、と唸ってから。ニカッと笑って言う。
「生理現象だからな、気にすんな!」
いつの日か、師から言われたのと同じような台詞を投げかけられて。どうしてだか今回ばかりはカッと頭に血が登った。
「兄さんはデリカシーが無いッ!」
「だから、そんなこと誰にでもあることだって」
「兄さんの馬鹿! いいから早く部屋から出ていけよ!」
弟のわがままな拒絶を受けて、エドワードはすっと無表情になり、ふいと視線を逸らす。
「そーですか。邪魔したな」
ひら、と手を振ってエドワードは相手にもしないといった様子だ。「あとで洗濯物、外の流し場に持ってこいよ」とだけ言い残すと、自分の洗い物だけ手に持って静かに部屋から出ていった。

アルフォンスは喉元までタオルケットをたくし上げて真っ赤になってうつむくと、大きく息を吸い込み、そして吐いた。
兄さんは変わった、とアルフォンスは感じていた。アメストリスで共に錬金術の旅をしていた頃のエドワードであったならば、アルフォンスが激しい感情を見せるとそれに呼応して、打って響くように激情をあらわにしていたと思う。今ではそういった素直さはずいぶんと影を潜めて、すっかりスレてしまったようである。
離れて過ごしていた三年間、旅の記憶を失ったアルフォンスは修行という名目で暮らしていたとは言え、年端も行かぬ少年として大人たちに守られた環境で過ごしてきた。同年代の友達も作らずに兄を探し続けて、性についてはひどく疎い。
オナニー一つ、知らないほどに。
一方のエドワードはどうだ。ルーツも持たない世界の、きな臭い灰色の都市でどれほど薄汚い社会の波に揉まれたことだろう。

再会した兄は寝酒を嗜み、タバコの煙をまとうようになっていた。たったそれだけのことでもアルフォンスは十分に動揺した。
ある日、飲みすぎたエドワードが着替えもせずに床で寝ているのを発見した時には、お酒なんてやめるべきだと訴えたことがある。ただ一言、「そうだな」とだけ返されて、結局やめるともやめないとも答えはもらえずにはぐらかされたまま。結果として、今でも変わらず酒は飲んでいる。
肝心なことに限ってのらりくらりなエドワードの対応に、アルフォンスはまるで一人相撲をとっているような、面白くない気持ちになっていた。

「兄さんはコレ、どうしてるんだろう……」
アルフォンスの脳裏にひとつの、少しいじわるを含んだ好奇心が浮かぶ。好奇心は、具体的な行動の決意へと結びついて一人、取り残された部屋で意気込む。
それがどんな結果をもたらすかなど、考えも及ばずに。

 

広いとは言えない部屋の端と端に、それぞれ二つ並べられたベッドの片方に、アルフォンスは寝間着姿で腰掛けている。エドワードも一服を終えてウイスキーのグラスを片付けて、そろそろ寝ようかというところの夜半前である。
エドワードはシャツとスラックスを脱ぎ、寝間着の緩いズボンを腰まで上げ、上衣のボタンを止めて行く。裾がはだけてちらり、と見えた腹には見事な筋肉が彫刻のように浮き出ていて、アルフォンスにとっては見慣れていることとは言え、溜息をつきたくなるような見事さだ。

エドワードがすっかり寝間着を着込むのを待ち、機械鎧を外そうかというタイミングを見計らって、アルフォンスは甘えた子犬のような顔で声をかけた。
「ねえ、兄さん」
「ん。どうした?」
「兄さんってさ……どうやってやってる? 一人でシてる時」
「シてるって何を?」
「オナニー。どうやってるの?」
「あ、ああ……そんなことか……」
金の瞳はゆらゆらと惑い、視線が泳ぐ。まだ閉めていなかった窓から生ぬるい風が吹き込んで、気まずい空気を舐めとっていく。
あくまでも逃げの一手を探していることがありありと分かるエドワードへと、アルフォンスは追い立てるように言う。
「そういうこと、師匠から借りた本でしか……知らないんだ。兄さんはもっと詳しいんじゃないの? 教えてよ。ぼく、他に聞く人も居ないんだから」
「そうか……。それもそうだな。もう少しアルも他の奴らと気楽に関われたらいいんだが……」
「ねえ、兄さん。ぼくは今、兄さんに聞いてるんだ。教えて、兄さん。兄さんはどうやってるの?」
惑う金の瞳は、今度こそ弟の姿をまっすぐに映す。そして、とても尋ねづらそうに、問いをなげかけた。
「お前、今は、勃ってるか?」
「え?」
「チンコ。硬くなってるか?」
「今はそこまで……」
「そうか」
そう言うとエドワードはアルフォンスの前に跪いて、弟のズボンへと手を掛けた。ゴムの緩い着衣は容易にずらされて、下着の前開きへと手を伸ばしている。
「ちょ、ちょっと! 何するの!」
「何って、チンコを出さなきゃ始まらないだろ」
「ぼくのじゃなくて、兄さんのを、教えろって」
「実際やってみないと何も分からないだろ」
すでにエドワードは、アルフォンスの萎えたものを下着の窓から手早く取り出して、生身の左手の人差し指と親指を輪っかにしてするりと巻き付けている。その感触にぞわぞわして、アルフォンスは生唾を飲み、黙った。
エドワードは確かめるようにアルフォンスのものの裏筋をつつ、と指先で撫で上げて、亀頭の根元をゆるく握ると気怠げに扱き始めた。決して強くは無い刺激であったが、意識の外の世界から与えられる予測のつかない動きは自分でするのとはまるでちがう感覚で、それだけでも息が乱れる。他者からの刺激に全くの無知なアルフォンスの自身はあっという間に芯を持って勃ち始めた。
「ふっ、ぅ、ふ……」
「どうだ、気持ちいいか?」
優しく、甘やかすように優しく問いかけられて、アルフォンスは虚勢を張る。
「兄さんはいつも……こうしてるんだ?」
「……気持ちいいみたいだな」
質問ははぐらかされて、代りに図星をつかれて耳まで熱を持つ。

扱く手は次第にロングストロークになり、陰茎の根元まで降りてから、すっと先端までをなぞり、先走りに濡れる鈴口をぐっと押し込んだ。
突然与えられた強い刺激にアルフォンスは腰が引ける。だが逃してもらえるはずもなく、追い詰めるように尿道口を親指で捏ね回される。エドワードが指を離すと粘着質なカウパーがつぅ、と糸を引いた。それをじっと見つめながら、感心したようにエドワードは言った。
「ほら、出口がパクパクしてるぞ。もう出したいんだな」
「ッ……!」
エドワードに、自身の痴態を嬉しそうに説明されてたまらなく恥ずかしくなる。そんな場所は、オナニーをしている時に見たことがなかったし、見ようという発想もなかったので、確かめる気も起きなくて目をつむる。ふるふると首を横に振って、快感を逃すように天井を仰いだ。
「アル、こっち見ろって」
エドワードは機械鎧の右手をアルフォンスの頬に添えた。恐る恐る、アルフォンスが正面を見下ろすと、潤んだ金の瞳とすぐそばで目が合って、これが現実なのか、オナニーの時に見るまぼろしなのか、区別がつかなくてゆめうつつの気持ちになる。
「怖くないぞ。心配すんな」
エドワードはすり、と頬を撫で下ろすと再びかがみ込み、すっかり首をもたげた雄茎を根元から優しく支え、亀頭のさきっぽに顔を寄せる。
そして距離はどこまでも近くなり。
終いには、敏感に勃ち上がった先端に、接吻を落とした。
「~~~~~~?!」
破壊的な光景と、与えられる刺激にアルフォンスが息を詰める。エドワードはそんな弟にお構い無しに、湿った唇の粘膜で竿の横をつつ、と触れて降りていき、根元まで達する。今度は、舌の先でぞりぞりと舐め上げた。それだけではとどまらずに、アルフォンスの成長途上の陰茎を喉までズッポリと咥えこんで体をひねりながら前後に動き始める。
ようやく状況に思考が追いついたアルフォンスが大慌てで悲鳴をあげる。
「ちょっと! そんなとこ……そんなことしたら汚いよ、やだ、ゾワゾワする、や、あ、やめ……」
「ひたなくねへよ」
「ひゃ、歯が当たる……咥えたまましゃべらないでぇ……」
有無を言わさず、といった様子でエドワードはじゅぷ、じゅっぷ、と音を立てながらアルフォンスの急所を攻め立てる。はしたない水音に耳まで犯されるようで、耐え難い状況にアルフォンスは身悶えした。
「はぁ、あっぁ、アっ、やめ、でちゃう、ちょっ、でちゃうってば!」
強制的に与えられる刺激に一気に射精感が込み上げて、アルフォンスはエドワードを引き剥がそうとする。しかし、エドワードはアルフォンスの腰にかじりつき、弟のものにびったりと密着させた口腔で、舌の腹をわななかせてずず、と吸い込んだ。
「あっ……ウッ、あ~~……」
アルフォンスの腰が跳ねて、思わず、と言ったように吐精した。びくびくと、背中をしならせてイっている間にもエドワードはちゅうちゅうと雄茎に吸い付いて、尿道に残る精液を吸い上げる。

射精も収まってくれば急速に現実に引き戻され、八つ当たりのように兄の肩を突き飛ばした。
「出ちゃったじゃないか! 汚いよ……だからやめろって言ったのに! ごめん兄さん……」
今度こそアルフォンスはエドワードを跳ね除けることに成功して、エドワードはよろけながら離れた。エドワードはベッドサイドのちり紙を一枚取り、弟の方を向くと、見せつけるように口の中の液体を吐き出す。
透明な唾液と、白濁したはずかしい粗相がマーブルにまざりあった、とろみのある粘液がベッドサイドランプに薄暗く輝きながら実の兄の口から紙へと垂らされるのをまざまざと見せつけられて、アルフォンスはひどく混乱した気持ちになった。
「な、何してんだよ。兄さん……」
「どうだ? 少しは頭、スッキリしたか?」
けろっとした顔をしてエドワードはちり紙をゴミ箱へと投げ捨てる。その澄ました態度が気に食わなくて、アルフォンスの胸にはふつふつと怒りが湧いてきていた。
「こんなこと、誰から教わったの? 分かった、わるい彼女が居たんだね?」
「別に……誰ともしねえよ」
「したことなくて知ってるわけないだろ」
「さみしい男同士でつるんでるとな、ろくでもない知識ばっかつくんだよ」
「良いよ、兄さん。ぼく怒らないから。どんな人だったの? 美人だった? 優しかった? ウィンリィに似てた?」
「そんな奴居ないって言ってるだろ」
「兄さんも大人になったんだね。ぼく、さみしいな……兄さんが遠くに行っちゃった気分だよ。ぼくが一番兄さんと一緒に居るのに」
「生意気言いやがって。お前以外の誰ともしねえよ」
「えっ?」
「あ」
思いもしない回答が投げかけられて、片やうっかり口が滑って。兄弟で気まずく目をそらす。
しかし、いかに現実逃避をしようとも小さなこの部屋には兄弟二人きりしか居らず。お互い、出方をうかがうようにいくどか迷い、やがて視線は交錯した。

問いただしたのはアルフォンスであった。
「ねえ、今の、どういう意味?」
「別にどうもしねえよ。何でもない」
「何でもないわけないだろ」
「しつこいぞ。ほら、もう寝るぞ」
顔を赤らめながら背を向けようとするエドワードのズボンのゴムをアルフォンスはわっしと捕まえた。捕まえたままずり下げながら、アルフォンスはこんもりとした下着の膨らみを手のひらで包んだ。
そして、とびきり甘えた声を出す。
「兄さんもここ、こんなになってるのに? このままでいいのかなあ」
エドワードの瞳孔がきゅっと収縮して、もう、我慢ならないというようにすーっと息を吐いた。
「コノヤロー……」
アルフォンスの視界が回転する。マットレスに背中から衝突した衝撃で、押し倒されたのだと理解する。
「へ、えっ?」
状況が読み込めないアルフォンスの下着をエドワードは剥ぎ取り、自身のトランクスも脱ぎ去った。ぶるり、と飛び出したのは、アルフォンスのものよりも一回りも大きくて、赤黒く高々と勃起した一物であった。
大人の身体の、自分のものとは違う成熟したそれを前にして、アルフォンスは釘付けになる。
「えっ何、兄さん、なんで脱いで」
「お前が言い出したことだろ……!」
エドワードは荒い息を吐いて、アルフォンスの脚を折りたたんで開脚させる。アルフォンスの恥ずかしいところはつまびらかに兄の眼前にあらわにされて、反射的に隠そうともがいた腕は容赦のない強い力で押さえつけられる。
こちらを見下ろす実の兄の顔には影が落ち、必死の形相でアルフォンスを捉えている。
かつてアルフォンスが鎧の姿をしていた頃には見下ろすばかりであったはずの兄は、今ばかりは威圧感を持ってアルフォンスにせまり、少し恐ろしくすら見えた。
「兄さん……?」
不安げに呼ぶ声を無視してエドワードはぐっとアルフォンスの尻を開く。丸見えになった不浄の穴をじとりと覗き込んで、唾をどろりと垂らすと、食らうようにむしゃぶりついた。
「ひゃ! それは汚いって! やだ! やめろって、やあ、ちんちん触るな! あっ、ぁ、やだ、舌、入って……」
エドワードは湧き出る唾液をたっぷりと後孔に染み込ませて、舌先で割り開く。そうしながら、一度は射精したが、硬さを再び宿しつつあるアルフォンスのものを容赦なく扱いた。
アルフォンスの敏感な孔の縁が舌先にねぶられる。どちらかというと違和感に近い不快感と、同時によく知る快楽を与えられて。ふたつの感覚が混ざり合うような、ぐちゃぐちゃの気持ちになる。未知の感覚に溺れそうになってすがる思いでシーツをきつく握りしめて息を詰めた。
「ふ、ふぅ、ぅぅ、んん、うッ……ふ……」
「声、おさえなくていいぞ」
「やぁだあ……」
駄々をこねていやいやする弟を押さえつけて孔から睾丸まで舐め取り、雫をこぼしながら顔を離す。

ようやく終わったか、と油断したアルフォンスを前にして、エドワードは自分の左手指につばをたっぷりふりかけ、どろどろに濡れた尻の孔へと添えた。
「挿れるぞ」
「何を? どこに? まさか、嘘だろ……」
承諾は得ないうちにぐぐ、と指が押し付けられる。出口としてしか使ってこなかったバージンの孔はキツく締まっており、中指一本の侵入を健気に拒む。
「そんなっ……それはないだろ」
エドワードは聞きもせず、突き入れる指にぐっと力を込める。狭い入口がついにずぷり、と侵入者を飲み込んだ。
「あっ……あぁー……」
アルフォンスは異物感にわななきながら、はくはくと口で浅い呼吸をして衝撃を逃がす。ぞわぞわと背中が粟立つような強烈な違和感があった。
差し込んだ中指をなじませるようにゆるく、うねうねと動かしながら、エドワードはひどく自信が無さそうに尋ねてくるのだ。
「なあアル、痛くはないか?」
「痛くは……無い……」
「本当か?」
「何でここに来てそんな弱気になるんだよ……」
アルフォンスに真っ当な文句を言われながら、エドワードは中指を浅いところをくちくちと捏ねる。確かめるように、恐る恐る中を探りながら、その肉壺の柔らかさにあてられてエドワードの瞳はぎらついた光を灯した。
アルフォンスは敏感な内臓を直に触れられて、心のどこか大切な部分までもが犯されているような、被虐しているような感覚がある。それでいながら、十分にぐずぐずに濡れて、兄の指を受け入れる排泄孔に痛みはなく、それどころか快楽を拾いつつあることを自覚してしまって、自尊心が溶かされていくような倒錯的な気持ちがしていた。

「あっァ、ああ、はぁ」
弟の喘ぎ声に確実に甘さが混じるのを聞きながら、エドワードは差し込む指を増やす。ずちょ、ずちょと水と空気が混ざる音を立てながら指をぐっと開いた。
「ひぃ…………」
アルフォンスが小さく悲鳴を漏らす。赤く熟れた蜜壺は糸を引いて、うねうねと柔く蠢いている。
ここに入れたならば、絶対に気持ちいい。
エドワードは固唾を飲んでそれを確認すると、ずぽぽ、と指を引き抜いた。

さんざに身体を暴かれて息も絶え絶えなアルフォンスはベッドの上であばらを大きく上下させている。エドワードが改めて力を込めてしっかりと開脚させても、もう、されるがままだ。そしてこれから何をされるのかも、さすがに薄々と勘付いていた。
「じゃあ、挿れるからな」
「うん……」
エドワードは固くそそり立った剛直に手を添えて、肉の園へと割り入っていく。指よりも質量のある異物を入口は拒んだが、意を決して力を込めればぐちゅりと入り込み、入口さえ通過してしまえば中は柔ひだがちゅうちゅうとエドワードのものを甘やかした。
エドワードは感じ入って吐息を漏らす。
「あーー……」
「はーっ、はっ、は、はっ……は…………」
アルフォンスは衝撃に耐えかねて過呼吸気味に浅い息を繰り返す。そんな弟の様子に気づいて、エドワードは唇を奪った。食らいつくように口をふさぎ、割り込ませた舌を絡ませる。
アルフォンスが、突然の口腔内への蹂躙に驚いて固まっているうちにじゅるじゅると唾液は垂らされて、アルコールとニコチンと、うっすらと自分の精液の青臭さが混じった苦みが口を満たして、抵抗を感じて一度は舌を押し返そうとした。それでも強引に舌に吸い付かれて、口は塞がれっぱなしで酸欠気味になって頭がぼーっとしてきて。終いには兄に身体を委ねて、兄の肩へと腕を回して舌を絡め返した。
下半身では繋がったままじゅっぷ、じゅるる、と激しく水音を立ててディープキスは続き、エドワードが緩慢に腰を動かし始める。異物感にアルフォンスが大きく身を捩って唇が離れる。自由になったアルフォンスの口から鼻にかかった声が漏らされる。
「あっ、ぁんっ、ああ……あ……ンっ」
エドワードはぎらぎらとした視線を弟へねっとりと絡ませながら呟いた。
「エロすぎんだろ……」
エドワードは、アルフォンスの腰を持ち上げて、ばすばすと激しい注挿を開始した。
「あんっ! あァっ、は……あんん、ぁ、んぅ!」
アルフォンスの頭は真っ白になって、とめどなく甘く喘ぐ。自身のペニスが、緩んでしまったかのようにはしたなく、ぱたぱたと透明な液を吐き出していることにも気づかずに。エドワードに腰を、身体を揺さぶられ続ける。
エドワードはアルフォンスの手を取り、握りしめて、再び口づけをする。ちうちうと唇に吸い付いていっとう深く腰を沈めると、一度、二度。奥まで腰を打ち付けて。
深く、深く絶頂した。

エドワードが萎えた陰茎をずるりと引き抜くと、アルフォンスの締まりきらない暗い蜜孔からは白濁液がたぷたぷと溢れてきて、洗いたてのシーツを汚す。弟は焦点の合わない薄目を開けて、唇の端からは涎を垂らし、ふるふると身体を震わせていた。
そんな、外でもない自分が引き起こした無惨な光景を見下ろしながら。エドワードの胸の内では遅れてきた罪悪感でいっぱいになっていた。

 

「ほんとうにすまん……アル、怒ってるよな……」
体を拭い、シーツを替えて着衣を整え、開口一番にエドワードはそう言った。
「なにそれ。怒るよ。馬ッ鹿じゃないの」
すっかり腰が抜けてしまったアルフォンスはベッドに身体を横たえながらかすれた声で言った。
「ごめんな。オレ、気持ち悪いよな、許してくれなんて、言えないよな……。もうオレたち、一緒に居ないほうが良いのかもな……」
「そうだよ。許さないよ。ぼくから離れることなんて許さないからね?」
「でも、こんなの普通じゃない。オレたちはこれ以上禁忌を犯すなんて……」
「こんなこと、禁忌かどうかなんて他人が決めることだろ。ぼくはそんなこと気にしないよ」
「でも、苦しい思いさせただろ。負担かけてごめんな」
「まあそれはそうだけど……」
アルフォンスは、上目遣いでエドワードを見た。
「でも、こういうこともっと知りたいな。ねえ、おしえてよ。兄さん」
「アル、何言って」
「またシよ?」
小さな、かすれた声でアルフォンスがささやく。微笑み、細められた瞳は潤んで輝く。あどけなさの残る中にも甘く誘い込むような、危ういバランスで色香を灯していた。
実の弟の、知りもしなかった顔を眼の前にして、エドワードは囚われたように吸い寄せられて、動けない。
「おう……」
かろうじて一言だけ応えると、そそくさと逃げるように背を向けて、布団の中へと潜り込んでいった。
そんなエドワードの不器用な後ろ姿を見て、アルフォンスは愛おしさが込み上げてふふ、と笑った。
(了)

 

 

 

 

 

ざれごと
ミュンヘンに来て男どもで要らん知識を聞きかじって耳年増になった童貞兄さんに夢見てる。
まだ解釈もあやふやで語るのは本当に危ういんですけど……シャンバラ兄弟は、兄さんがノーアに記憶をのぞかれているので、それ以前にえっちなことしてたらノーアさんがぶっ倒れちゃうと思うんですよね。(エロ妄想にそんなこだわり、必要か???) つまり、シャン兄弟は現実世界に転がり込んできて、正真正銘世界に二人きりだけのルーツある兄弟になった時にえっちするんですよね。(血走った目)
シャンエドくんの純真さにも夢見てる。エロいこと興味ないよね、兄さんにしか興味ないよね、分かるよ。でも結局えろいことに繋がっちゃうんだよな~~シャンバラの兄弟、お互いしか居ないからね……HAPPY……。
新参過ぎて明日には違うこと言ってるかも知れん。わからん。なんもわからん。こわいよお!