僕は無数の星屑のひとつ

百田くんにヤンデレている友達の居ない最原くんが、誰にでも優しい百田くんに独占欲を抱くおはなし。
最赤と百春要素あり。強姦気味のセックス、攻めのフェラ、嘔吐あり。

V3をプレイ中の百田推し友人氏の脳内最原くんによる百田くんへの怨嗟ツイートが最高にキマっていたので、友人氏のプレイを見ながらお借りして書きました。
当方は最原くん、最赤推しですので最百プロの皆様のお口にあうかどうか分かりませぬがご査収ください。

 

 

 

 

 

「なあ。こうして寝転がってるとよ、あの星々のどれか一つくらい、掴めそうな気がしねえか」
 百田は言う。
「なに、また、ばかなこと、言ってんの、よ」
 高速腹筋をしながら答えるのは春川だ。そんな二人のやり取りを最原はただ、黙って聞いている。
「馬鹿なことじゃねえだろ。オレは宇宙に轟く百田解斗だぞ。あの星のどれか一つに降り立つ日が必ず来るんだ」
「そういうことね」
「どういうことだと思ったんだよ」
「あんたのことだから、本当に星を鷲掴みしようとしてるんじゃないかと」
「そんな訳ねえだろ! ハルマキは男のロマンがわかってねえなあ」
「あ、あっそ。知らないわよ、そんなもの」
 いつの間にか腹筋を終えていた春川がぷいとそっぽを向く。22時半の街灯に照らされた白い頬がほのかに赤く染まっているのを最原は、持ち前の観察眼で目撃してしまう。
 そんな光景を目の前に、最原の脳裏に浮かぶのはいつだって「彼女」のこと。
 彼女がいま、もしも、僕の隣りにいてくれたのならば。ここに居るのが彼女だったなら。ほんの一瞬だけ出会ったひと。僕の手を取って、前へと進む希望をくれたひと。僕の光。道筋。あのひとがもしも今、ここに居てくれたなら。もしも――
 いや、違う。もう今は。
 赤松楓が居なくなってぽっかりと空いた心の穴。それを優しく、強く覆ってくれたあの人の存在。だったはずだった。なのに、それなのに。
 最原終一は前を向く。その胸に渦巻くどす黒い感情を押し殺すこともできずに。

 その誘いをかけたのは今朝のこと。春川魔姫がティーカップを取りに行くのを見計らって最原は、豪快にベーコンエッグにむしゃぶりつく百田に声をかけた。
「ねえ百田くん、ちょっといいかな」
 押し殺すような気持ちで発した声はひっくり返った。それでも構わない。声をかけただけでももう、十分に、最原は勇気を振り絞っていた。
「おう、どうした終一?」
「あ、あの。今日の夜、トレーニングが終わったあとちょっと二人で話さない?」
「いいけどよ、どした? 何かあったか?」
「うん、ちょっと。困ってる事があってね。頼りにしてる百田くんに相談したくって……。でもあんまり人に聞かれたくないから、夜に百田くんと二人の時が良いなあ。どうかな?」
 百田が断れないであろう言葉が分かってしまって、分かっていて織り混ぜる自分自身に、最原は反吐が出そうな思いがする。
「おう、良いぜ。頼ってくれよな相棒! じゃあ今夜トレーニングの後、オレの部屋な」
 仕組んだ通りのあっさりと、百田は親指を立てて快諾した。
「どうしたのあんたたち」
「あ? なんでもね―よ。男の約束ってやつだ」
「なにそれ」
 カモミールティーを片手に春川は百田の隣へ着席した。
「あ、春川さんおはよう」
「おはよう」
「えと……じゃあ、また夜ね」
「ええ」
 春川は冷淡に答えながらカップの中の琥珀色の液面を啜る。それきり、何を話して良いかもわからずに最原は、いくぶんスカスカになってしまった食堂を歩き、スープカップのオイルを飲むキーボの隣の自席へと戻った。

 いつも通りにトレーニングは春川がまっさきに終え、ずいぶん遅れて最原が腹筋百回を数え終えた。百田はゆったりと寝そべって相変わらず、星に手を伸ばすなどしていた。平穏な、夜の空だった。
 百田がこの後男二人の用事があるとを告げると春川はあっそう、とだけ小さく応えて早足に去っていく。
「じゃあ、オレの部屋に行くか」
 月のない夜に、百田は満ち満ちた満月のような笑みで振り向いた。その眩しさにどす黒い罪悪感は淀み、膨れ上がるばかりであった。
 
 百田の部屋は最原のものと代わり映えのしないものだった。簡素ながらに確保された居住スペースには高校生の一人暮らしには十分すぎるほどの設備が整えられており、最原は促されるままひとりがけソファへ腰を埋め、百田はベッドへと足を組んでどっかり座った。
「で、どした終一。相談事、っ、てえ?!」
 能天気に百田は声をかけてくる。その口を、憎くて愛おしくて、今となっては憎たらしくって堪らないひとの口を、最原は唇で塞いだ。しかし、戯れじみた接吻はたやすく引き剥がされた。
「オイ! 何すんだ終一! らしくねえぞ!」
 百田は最原の薄い胸板を押し返した。上着の袖口で口を乱暴に拭いながら。その様子を最原は氷のように冷たい眼差しで見下ろす。
「へえ。やっぱり僕のこと、拒絶するんだね」
 斬りつける意思を持つ鋭い声で、言う。
「らしくないって……何? 僕らしくないって、百田くんが一体僕の何を知ってるの」
 最原は迫る。鼻先と鼻先とが触れ合いそうなほどに接近する。視界いっぱいに収めるのは動揺しきって揺らめく瞳。
「本当に、どうしちまったんだ終一、お、オレの目を見ろ、落ち着けって、」
「どうもしないよ。僕は、僕さ。百田くんのほうじゃないか! 僕のことを見てくれないのは!」
 最原は叫ぶ。百田の肩を掴む手に自然と力が籠もり二人の重心が大きく傾く。男子二人分の体重を受けて、スプリングが悲鳴を上げる。最原が、百田に覆いかぶさる形でベッドに倒れ込んだ。初めて目にする最原の激情に圧倒されて、百田は口を、開かない。
「僕はね、嬉しかったんだよ。百田くんに終一って呼ばれて。友達だと思ってた。赤松さんが居なくなって僕は……僕は、あのままだったら抜け殻になってしまいそうだった。でもね、百田くんが僕を何度も励ましてくれて、終一って呼んでくれて。真実を暴くことに怯える僕を助手だと呼んでくれて、救われたんだ。でもね、」
 最原は、ほとんど泣きそうだった。
「百田くんはみんなのことを大切にしているんだね」
「そりゃあそうだ、オレはみんなを信じるぜ。ここに居る誰ももう、死なせはしない」
 最原は瞳を濁らせる。
「春川さんのこと、ハルマキって呼ぶようになったんだね」
「おう、ハルマキがどうかしたか」
「百田くんはさ、かわいそうな人に優しくしてあげる自分が好きなの?」
「……どういうことだそりゃ」
「だって僕たちかわいそうな人間に興味があるわけじゃないよね。僕じゃなくても良かったんだもんね……。毎朝僕の部屋に迎えに来てくれたのに、僕よりもかわいそうな、一人ぼっちの春川さんの部屋に行くんだね。トレーニングだって僕たち二人きりだと思っていたのに簡単に春川さんのことを呼ぶんだね。僕は百田くんを無二の友達だと思っていたのに……百田くんにとっては、誰でも良かったんだね」
「そういうことじゃねえ。オレはみんなのことを大切に、」
「そういうことだよ。みんなのことを大切にするって、つまり誰のことも大切にしてないって事なんだ。僕にとっての百田くんはかけがえのない友達だけど、百田くんは僕じゃなくても良かったんだ。弱っている人や傷ついている人が居たら励まして優しくするんだ。例えそれが、誰であっても。ねえ、百田くん。それってすごく残酷なことだと思わない?」
「そりゃあ、弱ったヤツが居たら手を差し伸べるのが男ってもんだ」
「ところでさ百田くん」
 最原は、百田を無視して続ける。百田のベルトに手をかけながら。
「ちょっとまて、終一、おまえ、何して」
「僕ってかわいそうじゃない?」
「は?」
「僕は赤松さんの犯行を止められなかった。……むしろ僕が余計なことをしたから赤松さんを殺人犯にさせてしまったようなものだ。その上、僕が真実を暴いたせいで赤松さんは……」
 最原は言葉をつまらせる。それは本心からの行動だった。しかし自らに降り注がれる、百田の真剣な視線を浴びて興奮を覚えていることもまた、事実であった。
「しかも僕を何度も励ましてくれて勇気付けてくれた友達だと思っていたひとは僕に興味なんてなかった。ねえ百田くん。それって孤独よりよっぽど孤独じゃない? すごくかわいそうだよね。百田くん。僕のほうがかわいそうだったらまた、僕のところに来てくれるのかな?」
 拙い手付きで寛げられ、顕になったトランクスから最原は、百田の自身を取り出した。
「オイ最原! 冗談が過ぎるぞ!」
「終一」
 最原は言い直させる。幼子の手を取り、誤った文字を直させるように。
「しゅう、いち、」
 気圧されて、なぞるように百田は答える。それを最原は極上の微笑みで受け入れる。そして、萎えきった逸物を握り込み、口に含んだ。
「ッッ……!!」
 百田が息を詰めたのを聞き、最原は小さく達成感を味わう。
 初めて舐める男の味はしょっぱくて、生臭い。とても人間の口腔内に含んで良いものとは思えない。でももう最原は、今更後には引けなくなってしまっていた。
 銀の糸を引きながら亀頭から口を離すと、逡巡する。普段自分でシていて良いところ。竿の横に舌先を這わせてみる。裏筋を親指で擦り上げながら、上目遣いに百田の様子を盗み見る。百田は腕で目を覆いながら思い切り顔を背けていた。
「百田くん、僕を見てよ」
「こんな状況、直視できるか……」
「見て」
 扱く手に力を込める。そうすると、自らの手の中で百田のものがビクビクと脈打つのが愛おしかった。
 ゆっくりと腕がどかされ、そろそろと視線が向けられる。顔は青ざめ冷や汗をかき、かたかたと小刻みに震えていて、それは酷い有様だった。ようやく目が、合う。それだけが嬉しくて、最原はゆるく勃ち上がった百田の先っぽにキスを落とす。そして、ズボンごとトランクスを下ろした。
「調子に乗るな! いい加減にしやがれ!」
 百田は叫んだ。叫びながらほとんど脱がされたズボンを抑える。
「そう、それが本心なんだね。やっぱり僕を拒絶するんだ」
「そ、そうじゃねえ! だからってこんなの、おかしいだろ!」
 そう言いながらも、抵抗の力の緩んだ百田から、完全に下着を剥ぎ取る。
「ねえ、百田くん、お願いだよ。僕のものになってよ」
 そう言って最原は中指をじゅぷりと舐めると、百田の窄まりへとうずめた。
「ばっか! どこ触ってるんだ、嘘だろ、それはねえだろ……なあ終一、本当にどうしちまったんだよ……!」
「どうもしてないよ。僕は僕だよ。百田くんが直視してくれなかった、僕なんだよ」
 外界からの物を受け入れたことのない、これからも受け入れるはずのなかった排泄の場所を、不器用な指が侵入する。石のように硬いかと思われた肉の輪は、しかし入り口さえ通り抜けてしまえばやわらかであたたかい臓物に行き当たった。最原は息を呑む。だってそこは、想像していたものなんかよりずっと、「良さそう」だったから。
 行きあたりばったりに指を動かしていても、そこは徐々に解れてきた。当たり前だった、そこは括約筋なのだ。広がる機能も当然のこと備わっていて、受け入れた指をおいしそうにむしゃぶるようにまでになっていった。
 指を増やす。大事な友人を傷つけないように、慎重に、慎重に。ねちっこくしつこく、慣らしていく。どれぐらい広げたら良いのかもわからなくて、三本まで増やした指を割り開くと、顕になったただれた肉のピンク色と中の昏さに目眩がした。
「もういいだろ、終一。なあ聞いてるのか、オイ!」
「僕だけの、百田くんの特別がほしいんだ。ねえ百田くん。僕に……ちょうだい?」
 最原は、もうとっくに痛いほど準備の整っていた自身を取り出す。百田はもう、喋らない。黙ったまま、目を逸らすことも許されず、呆然と信じがたい現実を見つめている。百田が自分だけを見て、自分のことだけで頭を一杯にしてくれている。
 この状況に最原は、最高に興奮した。
 硬度を持った自身を後口に押し当てる。抵抗はあった。百田を信じて押し進める。ぬっぽりと亀頭を飲み込んで、あとはやはり案外スルスルと挿入っていった。
「グウ……お、ァァァ……」
「百田くんの初めて、僕がもらったね……泣かないで百田くん」
 最原は百田の目尻に浮かんだ涙を拭った。こんな百田くん、僕以外の誰にも見せたくないな。そう、最原は思った。
「じゃあ、動くからね」
 啄むようなキスを百田の頬に落とすと、最原は動き始めた。こういう行為をするのは男相手でなくても初めてだ。勝手などわからないまま闇雲に動いてみる。引いた腰に百田がむしゃぶりついてきて、雄茎を持っていかれそうだ。じっとりと湿った中が吸い付いて離さない。その感覚だけで、最原の理性は簡単に飛んだ。
 出したい、出したい! このナカに、射精したい!
「も、百田くん、ごめ……」
 最原は貪る。飢えてやせ細った狼のように、百田の肉襞を穿つ。百田の喉からひしゃげた声が漏らされて、でもその声は最原には届いていない。初めて同士の交合は長くは続かなかった。ガツガツと打ち合わされる肉と肉とがより深く、小刻みになる。
「っふ、ぁ、ぁぁ……」
 情けない声が漏れるのに、最原自身も気付かない。ただ、本能だけで、百田の太ももを引き寄せて、腰を深く、深く押し当てる。そして愛する友人の中へと吐精した。

 玄関チャイムの音が鳴り響いて飛び起きる。
「はあい!」
 慌てて時計を確認する。昨日の夜ふかしが祟ったのか少々寝過ごしてしまったらしい。ドアを開ければ宛てのついていた通りの人物が立っていた。
「いつまで寝てんのよ。もうみんな食堂に集まってる」
「ああ、起こしてくれてありがとう。春川さん」
「早く来なよ」
「うん。すぐ行くから、先に行ってて」
 最原は春川を先に行かせると急ぎ気味にパジャマから制服へと着替えた。
 
「みんな、お待たせ」
「遅いぞ最原」
「寝坊ですか最原クン」
 方方から野次が飛ぶ食卓へはにかんだ笑みを浮かべながら着席しようとした、その時であった。
 彼と、目があった。
 百田は目を逸らすことも出来ずに、まるでいつもみたいに、へらりと上げようとした手は、しかし口元へと当てられた。弾かれたように百田は立ち上がり、トイレまでは間に合わないと判断したのか、キッチンのゴミ箱へと走っていく。
「おえ………、ゲホッゴホ、ごぼ……ぐおぇぇ……」
「百田あ!!」
「百田くん?!」
 みんなに、この学園に生き残ったみんなに見守られる中で、百田は嘔吐した。冷や汗をびっしょりとかきながら真っ青になって胃の内容物をひっくり返す百田に、最原は真っ先に駆け寄った。
「百田くん! 大丈夫!?」
 さすろうと触れた背中はびくりと跳ねた。だが、それだけだった。
「ああ、ちっと……風邪でも引いたのかもな」
 そう言ってこちらを見てくれる、百田の吐瀉物まみれの顔が愛おしい。
「少し、部屋に戻って休んでたほうが……」
「……おう、大丈夫だぜ。心配するな。……終一」
「……分かったよ、百田くん」
「とりあえず顔、洗ってくる……」
 みんな、みんなが見守る中で、百田はふらついた足取りで流し場へと歩いていった。その背中を群衆の中から見つめながら最原はひとりだけ、満足そうに微笑んだ。
 
 所詮、僕は彼にとって無数の星屑のひとつなのかもしれない。それでも僕は、夜空にいっとう輝く満月に、僕だけを照らしてほしかった。そのためにならなんだってすると決めたんだ。だからもう後戻りなんて出来ない。僕を、僕だけを、見てもらうって決めたから。