2025年2月9日モブ律オンリー「盲愛確率100%」でお出しする予定の本です。
見せあいっこだけしてるじれったい感じの兄弟が小さな一歩を踏み出したり、浜焼きに行って一緒に牡蠣を焼いてはしゃいだりします。ワビサビの精神から(??)挿入なしになりました。成人向け描写も比較的ぬるめです。

白濁した液をたっぷりと吸い込んだティッシュを、湿り気を内側に念入りに握り込んで腰を落ち着ける。出した後の、プールの授業があった日に受ける午後の座学のような気だるさというか。幸福な夢から覚めて、その甘ったるさが思い返せば支離滅裂であったことに気付いてしまってすっと思考が冷ややかなになるような、そんな心地というのもさして悪くないものだ、と最近は思えている。
隣り合わせで自慰をしていた兄さんは、まだお楽しみの真っ最中。兄さんはたいてい僕よりもイくのが遅くて、こうして僕が眺めていることが多い。僕が早いだけなのかもしれないけれど、そのあたりの事情というのは兄弟二人分のことしか分からないから、真相は定かではない。
僕しか居ないのだから我慢しなくてもいいのに、兄さんはする時には声を押し殺すのだけれども、それでもこの至近距離の特等席であれば漏れる吐息をひとつも逃さずに観察することができる。声を抑えようと集中するあまり、注意のおろそかになった肩が危うく揺れている。
「からだ、揺れてるね」
それを声に出して確認してやると恨めしそうな上目遣いと目があった。兄さんは反論するでもなく、再び瞳を伏せ、「二人がかり」の一人遊びに没頭する。
色白な兄さんの肌色の中でも、ひときわ異質に目の毒な赤に染まった怒張は、パンパンに勃ち上がっていて、ああ、これに触れてみたいと思ってしまうのは、幼気ないたずら心なのか野蛮な嗜虐心なのか、むしろ倒錯した被虐心なのか。区別のつかない衝動に駆られて生唾を飲み込む。
もっともそれは「約束」のせいで叶わない願いなのだけれども。
「兄さん、イきそう?」
「ん……」
鼻息だけで返答すると、いよいよ切羽詰まった様子で裏筋を擦り、控えめに震える。どっかりと床にあぐらをかいた腰の代わりに、肋を前後に大きく揺らして、はーっ、と長い息を吐き出し、亀頭の先にティッシュをあてがった。
薄く開かれた瞼の奥に、据わった瞳が水に浮かぶ油膜のようにぎらりと輝くのを垣間見る、この、兄さんが射精する瞬間を眺めるのがとびきりに好きだ。こんなにも人畜無害、無欲、無彩色、背景に溶け込むほどの没個性、みたいに世間には思われているらしい兄さんにも、猛々しい性の本能が備わっているのだと知っているのは、僕一人だけでいい。
兄さんがはくはくと息をするたびに丸い頬が揺れるのがかわいいから。やわらかな肌に爪の先をそっと突き立てると、やや不満げに膨らんだ。
「ほっぺに触るくらいならば、いいでしょ?」
指の腹で頬の柔らかさを楽しみながら、許可されることが分かっているお伺いを立てる。
「うん。それ、捨てて来るね」
兄さんは僕から使用済みティッシュを当たり前に奪い去って、自分のティッシュと一緒にゴミ箱へと捨てに行った。ゴミ箱からターンして戻るついでに、暖房の温度を二度上げる。
「この部屋寒いよね? 昨日は少し暖かくなったと思ったのに、また冷えたね」
「そうだね。僕もちょっと肌寒いと思ってた」
兄弟揃っていそいそと着衣を整えながら、僕は本日抱えていた議題を提示する。
「ところで兄さん、チョコレート食べたい気分だったりしない?」
「チョコレート? いきなりだね」
「今日は14日だったから……」
「あー……ああ、2月の。もうそんな季節だったっけ」
「そんな季節だね」
「今年は鞄に入りきったの?」
「朝に空の紙袋持って登校した」
「準備がいいね」
「今持ってきていい?」
「うん。食べる」
「良かった。ちょっと待ってて」
僕は小走りで自室へと戻ると、無造作に放置してあった「兄さんのおやつ」を掴んでわずか数歩のドアツードアを戻ってきた。
「お待たせ」
「全然、待ってないよ。ほんとに紙袋いっぱいに入ってる……」
「中身見ないで持ち帰ってきたから、ここでついでに仕分けして良い?」
「良いよ」
部屋の主に許可をもらったので、遠慮なしに紙袋をひっくり返して中身を床にばら撒く。丁寧にリボンがかけられたもの、ターミナル駅のデパートの包み紙にくるまれたもの、チョコレートボンボンにトリュフに板チョコ、少し変化球でブラウニーとかアメリカンな巨大チョコチップクッキーなんかも入っている。
目に止まった一つをつまみ上げて僕は呟く。
「……これは、捨てようか」
「そうなの?」
「手作りなんて何が入っているか分かったものじゃないからね」
「そうなんだ?」
僕は、市販のチョコレートを溶かして固め直したのであろう、アラザンとカラースプレーの乗せられたハート型といった分かりやすいものや、その他品質表示やブランドロゴのついていないもの、梱包が素人っぽいものもオーバートリアージでより分けて「捨てるものゾーン」へと隔離した。
「残ったのでも十分にたくさんあるね。……あっこれ、僕でも知ってるお店だ。駅の券売機前にポップアップショップが出てた」
兄さんは生き残りの山をかき混ぜて、小さな紙袋入を拾い上げた。兄さんが手を突っ込んで取り出せば、出てきたのはまばゆいほどのショッキングピンクのハート缶だ。真ん中には誰もが知る老舗チョコレート屋の、馬に乗る裸の女性のロゴマークがでかでかと印刷されている。
「あれ、まだなにか入ってる……これは……」
兄さんはミント色の封筒を取り出して小首を傾げている。
「それも捨てようか」
手を伸ばした僕を無視して兄さんは封を切る。星型のシールをななめに破ってこじ開けられた封筒の中から出てきたのは、クローバーの透かしのプリントがされた一枚の便箋である。
「ちょっと、兄さんってば」
「えーっと……影山律くんへ。同じクラスになってあなたの横顔がいいなと思ってから、もうずいぶんと長いことが経ちました。気持ちを伝えることができないまま、いつの間にか春が近づこうとしています。クールな律くんは物静かで冷静で、ほかの男の子とはちがって大人びていて、なかなかお話できないけれど、ずっとあこがれが強くなっています。バレンタインデーは勇気を出してお手紙を書きました。私とまずはお友達になって下さい。きっと律くんが好きな女の子になれるようがんばります……だってさ?」
「やーめーてー……」
実の兄に、自分宛てのラブレターを音読されるのがこんなにも苦行だとは思わなかった。兄さんの口から出てくるはずもない言葉が兄さんの声で発せられるのも苦しいし、見当外れな内容そのものに対しても、自分が書いた訳でもなしに羞恥心を抱いてしまう。こんな状況に追い込まれた元凶の女子に対しては、なんて迷惑な人間だと怒りすら覚える。
悶絶する僕とは正反対に、兄さんは淡々とした様子で感想など述べる。
「丁寧なひとだね」
「的外れって言うんだよ。こういうの」
「律は人気者だね」
「意味のない指標だよ。こんな中身のないもの、どうでもいい」
「僕なんてフラれたばっかりなのに」
「そ、それは……あっ、そうだ。他のチョコは……」
適当の当てずっぽうに、すがるように手近にあったブラウンの包み紙を手に取る。不運は続くもので、今度は一筆箋がはらり、と落ちてきた。しまった、と思う間もなく兄さんはいつにない素早さで拾い上げて読み上げた。
「かげやまくん大すきです! けっこんして下さい!」
「そうですか……」
もう少し情緒とか恥じらいとか常識とか段階を踏むとかないんだろうか。そんな感想を抱いてから、わずかでも情動を動かされた事自体が馬鹿馬鹿しくなって、一周回って心が冷えてきた気がしてくる。
「こんなに情熱的な手紙なのに他人事なんだね」
「そりゃ、他人だからね」
「ふーん」
自分勝手な言葉を次々とぶつけられて、僕はいい加減にうんざりしていた。どうして女子というのは、他人の異性というだけでこうも無責任な言葉を、大して知りもしないたかが他人ごときに吐けるのか。神経を疑ってしまう。
だって、僕が唯一欲しいこの人は。
僕の最愛の兄ときたら。
もう何回繰り返したかもわからない思考の渦に囚われて、いつも通りに苦しくなる。僕には、自分は兄さんに愛されているという自覚が十分にある。多少の無茶なお願いだって、聞いてくれるだろうというずるい打算も自信も正直なところ、ある。
でもそれはあくまでも。
弟だからという話であって。
男兄弟なんてものはいずれ離れて、別々の人生を歩むものだという常識くらい僕にだってある。だから僕が兄さんの、いわゆる生涯の伴侶なんかには絶対になれないだろうという諦めは、常につきまとっていた。兄さんとはいつまでも一緒に居られるわけじゃない。そのことに思い至るたびに、僕の心は切なくなって、苛まれる。
そこへ他人の女子から結婚などという、実に世にありふれた、決定的なキーワードをぶつけられて最高潮にイラついてしまう。女子たちに悪気があるわけでもないことは理解しているけれど、それでもその言葉は僕の泣き所にクリーンヒットしてしまっていて。じわじわと舌の根から染み出してくるような苦い感情をどうすることも出来ない。
きっと、すごく難しい顔をしていたのであろう僕へ、兄さんが声を掛ける。
「律はいつでも彼女が出来そうだね」
「彼女なんて要らないし作らない」
「そうなの? 彼女が出来たほうが、なんとなく、楽しいんじゃないかな」
「楽しいって、何? 勝手なこと言わないでよ。それは僕が決めることだ。兄さんに口出しなんてされたくない」
「それも、そうだよね」
力んだ僕の言葉を、兄さんは緩やかに受け止めた。
兄さんは、ブラウンの包み紙を破きながらむしり取っていく。フィルム映画に出てくる、酒場の女性の口元のような真紅の箱が現れる。表には毒々しく花弁を散らす薔薇の大輪。蓋を留める透明な楕円のシールに短い爪を引っ掛けて剥がせば、赤い紙箱は耳障りな音を立てながら表面が剥げて、白いがさついた本性がむき出しになる。
「ねえ律。しばらくはああいうの、やめにしようか」
「ああいうの、って」
兄さんが示唆するものが一体何であるのか。分かりすぎるほど分かってしまっているというのに無意味な遠回りをした。錆びた思考がなにか、上手い魔法の言葉を探そうとして、そんなものはあるはずもなくて、自分の心臓の音がうるさくて耳を塞ぎたくてたまらない。
「僕は、もう兄さんに必要ないの?」
口を滑らせて、よりにもよって言わないほうがマシの泣き言を言う。言った瞬間から、失敗だと大後悔して、心の中は自分自身への非難轟々。
そんなことを言ったって、兄さんを困らせるだけのことで。何も問題の解決はせず。引き出される兄さんの返答だって、分かりきっていることだから。
「律は僕の大事な弟だよ」
「聞きたいのはそんなことじゃない」
兄さんの指が紅の箱から、小ぢんまりと整列した個包装を一つ取り出して、ビニールを剥く。
「僕たちは何をしていても、していなくても。たった二人の、誰よりも大切な兄弟だから。だから律は大丈夫だよ」
ホワイトチョコレートを挟み込んだココア入りのラング・ド・シャに白い歯を突き立てる。脆い洋菓子はざくり、と軽い音を立てて輪郭を崩し、兄さんの口腔へと消えていく。もそもそと咀嚼しながら「これ、美味しいよ」なんて、最高に空気の読めていない発言をされて、一方で僕の中では聞き分けの悪い僕が暴れまわっている最中で、理由もわからないまま涙が溢れて止められない。
「律、元気だして」
目下、僕の悩みのタネは、何を勘違いしたのか食べかけのチョコサンドクッキーを指先につまんで差し出してきた。それも、かじった側をこちらへと向けて。
僕は眼の前のクッキーに食らいつく。大口を開けたが全ては口に納めきれなくて、溢れた破片が床に飛び散る。分別の無い、けだもののように貪り付いたからか、少し驚いた兄さんが「あ」と言ったかも知れない。
兄さんの反応に構っている余裕はない。勢いのまま、兄さんの指へとくちびるを這わせて、人差し指の第二関節にわざと音を立ててキスをした。
「じゃあ僕、部屋に帰るね。それ全部あげるから」
兄さんの返事も聞きたくないしどんな顔をしているかも見たくなくて。僕自身も、余計なことを口走らないうちに部屋を飛び出す。わずか数歩のドアツードアの、自分の部屋というわずか数畳の安全地帯に逃げ込んで、ドアにもたれかかって崩れるようにずるずると座る。自分の行いが何をもたらすのか、結果が怖くて耳をそばだてたが、僕自身の心臓の音がうるさいだけで、これと言った物音を拾うことは出来なかった。
「これって、『約束』破ったことになるのかな……」
応える人間も、霊すらも居ない部屋で呟いてみる。
兄さん怒るかな。悲しむかな。
それとも喜ぶ……なんてことは、無いか。
全く見当のつかない実の兄の頭の中を想像してみて、どれも見当外れなことだけが分かっていて。口の中に残る甘ったるさに気分を悪くしながら、冷たい床にうずくまった。。
あれから一週間。一週間もだ。兄さんは本当に「誘って」来ることは無くなった。時期も学年末の期末テストが間近だから、本気で勉強しているかも知れない兄さんを邪魔したくないのと、単純に強情になっているのもあって、僕から誘うこともない。
日常的な会話は穏やかなものだ。
例えば先程、僕がお風呂上がりに牛乳70%のアイスバーをソファで食べていた時のこと。これからお風呂へ向かおうという兄さんは「あ、僕もそれ食べたい」などと言い始めた。冷凍庫の在庫を確認した兄さんが目に見えて肩を落としているものだから、「これ食べていいよ」と差し出してみたのだが。
兄さんは僕が差し出したアイスの棒を手で受け取ることはなく。近寄ってきた兄さんは、どんどん近くなり、腰をかがめて影が迫り、顔がにゅっと近くなる。そして、白い歯列を見せながらぽっかりと口を開けて、僕の手から食べかけのアイスをひとかじり。凍ったミルクの砕ける、しゃりしゃりとした咀嚼音がいやに頭の奥に響いたのを覚えている。狙いをそらして口の端についたアイスが、蛍光灯に照らされて垂れるのを、のそのそとした手の動きで払う。それでもベタつくのか、赤い舌先を出して口の周りをベロ、と舐めた。
「ありがとう、律。やっぱりこれ美味しいね。また買っておいてもらわなくちゃ」
手で、舌で。不器用に拭いとろうとして、かえって糖の粘着質を広げながら微笑む兄さんの姿は、最高に愛らしくて。
ああ、やはり抑えきれない。
窮屈になった前を早急にくつろげなくてはならない。パジャマのゆるいズボンを大急ぎで脱いだら、足首でつっかえて転げそうになった。ベッドの上で一人、すったもんだしながらようやく下を全て脱いで、無様に首をもたげたものをつまみ上げる。
息を荒げて擦ってみたそこは、驚くほどに感覚が鈍かった。まるで分厚い被膜にでも覆われたように、快感よりももどかしさが勝る。
いつもしていた時にはどこが気持ちよかっただろうか。裏筋をこね回せば思い起こされるのは、兄さんが隣でしていた時に不意に上げた声だ。「あ」とも「お」とも聞き取れるような、変声前のメゾソプラノの喉奥から理性の追手を振り切って逃げ延びてきた、快楽の粋を集めた母音を耳に拾ったときの僕と来たら、すごかった。心臓も、手に掴んだ僕のものもどくどくと脈打って、熱い血潮が頭まで昇って視界が赤く染まるようだった。ほんの一瞬の兄さんの声を聞いただけで身体のタガが外れてしまったようで、夢中になって扱いて、あっという間に出してしまったような覚えがある。
そうだ、思い出せ。
あの時の兄さんの声を。
そう遠くはない記憶を掘り起こそうと躍起になり、あの声を脳内で追い求める。そう、あの時は聴覚だけでキャパシティを超えていて、兄さんの横顔すら見ることが出来なかった。だから声だけが頼りなのだ。鼓膜に焼き付けたはずのあの声は思い出そうとするほどに遠く霞んで、似ても似つかないものに上書きされていくようだ。貴重なお宝を掴み直そうとして、かえって手垢を付けて汚しているような。つややかな湯豆腐を箸でつついて角から崩れ去っていくような。焦りともどかしさだけが募る。
快楽なんて拾うどころでは無くなって、それでも意固地になって萎えてきたものを必死に扱きながら、僕は呟いていた。
「兄さん、兄さん……」
「律」
聞こえるはずの無い返事が返ってきて、丸出しの下半身を隠そうと反射的に、無意味に身をかがめた。ノックもなしに部屋へと侵入してきた兄さんは、身を縮こまらせる僕にお構いなしに歩み寄り、もぞもぞとベッドの上まで上がり込んでくる。見せることなんてもう慣れたものと思っていたのに。こんなに一方的な侵略には、いたずらがバレた幼児のように居心地が悪くて固まっていると、思わぬ司令が下された。
「律、続けて」
「あ、いや、えっと」
「良いよ、律。続けて」
「でも……こういうのはもう、やめにするって」
「『モブ』は律のこと手放そうとしているみたいだけど、『僕』はそうじゃない。律が我慢する必要なんてない、そうでしょ?」
慈愛に満ちた微笑みをまっすぐにぶつけてくる兄さんの口ぶりから、状況は芳しくないことを察知する。
以前。それは兄さんの特異な状態に怯えるしかなかった、兄弟喧嘩すら出来なかった頃よりかは、僕だって成長したつもりでいて。僕自身も超能力を得て、兄さんとぶつかり合うことを経て、ずいぶんと僕の中での兄さんへの恐れは軽くなったつもりでいたが。それでもこのデリケートな状態には慎重にならざるを得ない。
こうなった兄さんは爆発物であると同時に、ガラスの花びらである。どう取り扱ったものか戦略を考えあぐねたが、とりあえず小細工じみた愚策は放棄して、目下最大の疑問点を率直に尋ねることとする。
「でも、どうしてその、僕がシてるって分かったの……?」
「だって、律はシたいときとかシてるには少し、力が不安定になっているから」
「え。バレてたの」
「うん」
「それっていつ頃から? もしかして、ずっと? 全部……?」
「律が超能力に目覚めたって知ってから、律の力を感じようとしているうちに、ちょっとずつ。律の強い欲求は何となく分かるようになってきた」
「僕ってそんなにコントロールできてない?」
「そういう訳じゃないけど……超能力者の気配は知ろうとすれば、うっすらと分かるから」
「じゃあ、兄さんが誘ってくれていたのって」
「それもあるけど。そう思ってくれる律とするのが、いちばん嬉しいから」
僕はすっかりのぼせてしまった。耳まで赤いことが見なくても分かる。全部バレてたんだ。兄さんには。丸裸にされているようで、お漏らしをバレた子どものようで、恥ずかしく思うのと同時に、しかし喜びがじわじわと湧き上がる。
こんな劣情を抱く僕を、兄さんは分かった上で付き合ってくれていたのだ。
こんな劣情を抱く僕に、兄さんも興奮してくれていた。
そのことが嬉しくて、じんわりと視界が滲んだ。
「さあ律、続きをしよう?」
「うん……」
(新刊へつづく)