パステルブルーの紙袋から包みを取り出す。簡易包装の紙を破いて開けると出てきたのは、やはりパステルカラーのふわふわもこもこパジャマだった。さっそく広げて袖を通す。シフォンケーキのようになめらかな肌触りに一層、胸が高まる。上着のジッパーを閉め、ズボンを履き、いざ、姿見に自分の格好を映してみた。
「うーん……?」
彼女、赤松楓は首を傾げた。似合っているような、いないような。何とも変な感じだ。
初めて彼氏のおうちにお泊りした時にTシャツをお借りてしまったので、気の利いたパジャマでもあればいいな、と思い立ったのが今朝のこと。そのままの勢いで慣れないお店に入り、お小遣いをはたいて買った。だがしかし、ごく普通のパジャマしか着たことがなかったから。見慣れない自分の姿に、違和感が勝っていた。
「うーん、うーん……」
赤松は唸った。たっぷり悩んで、しかめっ面で鏡とにらめっこする。
「うん、……よし!」
そうして決心するとハサミを取り出し、タグを切る。
せっかく買ったのだ。汚さないうちに脱いで、たいせつに畳むと、こっそり用意してあったお泊りセットにしまい込んだ。
決戦の日は早かった。奥手な彼氏がさも重大そうに、申し訳無さそうに切り出すものだから一体何事かと思いきや、二回目のお泊りのお誘いで。拍子抜けしながらも、楽しみで楽しみで、踊り出しそうな心持ちだった。
先にシャワーを浴びて、いざパジャマに着替える。こういうのは初めの勢いが肝心だ。気持ちを奮い立たせて、彼氏、最原終一の居るリビングへ飛び込んだ。
「お持たせしました!」
「あ、ああ、赤松さん?!」
最原は素っ頓狂な声を上げる。
「変……かな?」
「いや、いやいや! 全然……その、僕も、シャワー浴びてくるね……」
最原はそれきり、そそくさと脱衣所に向かってしまった。想像ととずいぶん違った反応に、すっかり落ち込んでしまって、シャツの裾を弄りながらそわそわと最原を待った。
「お待たせ……」
最原はおずおずとリビングに入ってきた。
「あ! 新しいパジャマだ」
「そうなんだ、フリースでもこもこだから、なんだかお揃いみたいだね」
「ほっ本当だ! 最原くんもふわふわー!」
「さっきはごめんね、可愛くてびっくりしちゃって……」
「えっ、……もう! そういう事言う! 最原くんだってもこもこでかわいい!」
「ええ?! 僕は別に……」
「かわいいの!」
「赤松さんの方がかわいいのに……」
「もー!」
ゆでダコみたいに真っ赤になった最原と赤松は、不毛な攻防を繰り広げながら。二人きりの夜はゆっくりと過ぎていた。