魔族兄弟の或る一夜の交尾

⚠ → ♡濁音汚喘ぎ/りっつのスティックがイッヌ
その他細かい性癖反転 → 全体的にハードプレイ気味/小悪魔をサキュバスか何かと勘違いしている/亀頭球/結腸攻め/攻めキメセク/兄が未精通/ハロウィン兄弟は永遠に二次性徴期(止まってる)

 

 

 

 

 今宵はハロウィン。年に一度だけ魔界と現し世の境界が融ける夜。異界より吹き込む新鮮な霊気に魔法使いもドラキュラも、誰も彼もが浮足立って魔の血を滾らせる祭りの日。
 これは魔界の地で久遠の時を少年の姿で共に暮らす兄弟の、少しだけ特別でありふれた日常の、そんな夜のことだった。
 
 
 
 二匹の魔族がまぐわっている。
 人外の怪物的な運動量を堅牢に支えるオリハルコン合金の特注スプリングは、絶え間ない衝撃によじれ、悲鳴じみて軋む。雄鹿をもその糸で捕らえて丸ごと喰らう、地獄蜘蛛の糸で織られたなめらかなシーツをきつく握りしめて、突き立てられるのは悪魔の爪。
 時刻は丑三つ、魔界の欠けない満月がやや傾いた夜下がり。魔界中が色めき立つハロウィンの日に、とある魔族の館では黒夜堂々、嬌声が響いていた。

 ベッドに縫い止められて小悪魔は鳴く。しわがれる日を知らない永遠のボーイソプラノは、突き、叩き込まれ、そそがれる法悦にぐずぐずに蕩けきって、淫欲をそそる魔性の蜜の甘ったるさを隠せない。
 ゴーストみたくましろくてやわこい、小悪魔の細腿に絡め取られながら腿の合間、小さな窄まりを犯す若雄の腰から伸びるのは、たっぷりと太く、ふかふかとした獣の尾。荒々しい律動に艶やかな毛並みは乱れ、めちゃくちゃに振り回される。濃密に生えそろった獣毛がはらはらと抜けて月光に煌めき、空を舞った。
「あっ、ふ……あっ……あぅ、りつぅ…………」
 魔族の兄、茂夫はただ一人の弟の名を呼ぶ。最愛の愛狼に知り尽くされ過ぎるほどに知り尽くされたよわいところ、ずくずくにできあがるまで熟れさせられた淫口をこね回される。
 あまあく疼いて仕方のない、好きなところ。しなだれ掛かるようにやわやわと波打つ肉壷のかべ。そしてふわふわとした貪欲なしこりを、獣の雄の鋭いもので幾度も穿たれる。触れるだけでも砕けてしまいそうに細い腰骨はけだものの巨大な前足に軽々と抑えつけられ、食い込む鉤爪に囚われたまま激しく抽送を繰り返される。肚の奥へ、奥へと重く甘い痺れが押し込められる。
 逃げ場を失い、淀み、脳天まで悦楽に溺れさせられて、もうろうとしてくるのを茂夫には受け入れる他、術はない。
 ピストンがいっとう深く、小刻みになる。絶え間なく食わされる衝撃にチカ、チカと明滅する視界の中でやさしい涙の膜越しのぼんやりと、弟の顔が泣きそうに歪んだ。
 
 刹那、茂夫の胎が爆ぜた。
 否、違う。
 そう錯覚をしてしまいそうなほど。狼男の陰茎がその性を顕した。
 決して広くない、しかし、とろとろといやらしくほぐれきった茂夫のなかが爆ぜたかと思わせるほどの質量。そして熱量に、腔が埋め尽くされたのだ。

 律は唸る。
 それはまるで、はずれ者の夜更けの遠吠えに寂寥を覚えるような。あるいは飢えて、屍肉を求める仔どもらの甘え声のように。兄想いで聡明な弟が内に眠らせていたけだものを、けだものたらしめる万感の、恍惚。ひとの言葉にはもはや表しようのない野性の至福が律の鼻面を、噛み締めた牙の隙きを抜ける。漏らされる。長い、長い吐精の始まりに、雌伏していたけだものが呼び覚まされる。
 薄べったい舌に先だけをちろりと覗かせる。と、深く肉楔を打ち込むべく、びたり、と密着させた腰引き始めた。どぷ、どぷりと兄の胎へと子種を撒きながら、ゆっくりと、なにか確認でもするかのようにじわじわと、焦れる速さで引いてゆく。
 茂夫はたまらずにひぃ、と引きつった悲鳴を上げた。
 無理もない。いままさに茂夫の、もっとも敏感に熟れた箇所に、耐え難い責め苦が咥えこまされていく。
 イヌ科の祖。魔界の森の王たる獣の一族を、ひと唸りで統べる魔族。狼男の陰茎は、成獣には至らないあどけなさを残す。とはいえどもその根本には、種の繁栄の象徴たる瘤を隆々とこしらえていた。組み敷いた雌のすべての子袋の隅々まで、一滴の種も零さぬよう注ぎ込むための瘤。狙い定めた雌腹を確実に孕ませるまでは決して抜けない、狼族の雄の証だ。
 引かれた瘤はみちみちと、小悪魔に容赦のない拡張を強いる。広がりきらずにめくれた内壁はぷっくりと腫れぼったく、てらてらといやらしい。仰け反った首筋に脂汗が珠のようにぷつぷつと浮いた。
 やがて、何か小さく、ぷちりと弾けた音がした。茂夫の肛門に針のように鋭い痛みが突き刺さる。身の中心から真っ二つ引き裂けてしまいそうな苦悶に小悪魔の横隔膜はびりびりと痙攣する。錆びついた蒸気機関のように、ひゅう、ひぃ、と機械じみた呼吸音を徐々に速める。
 
 しかし小悪魔は逃れない。
 見開いた瞳は上転して白目を晒し、はぐはぐと顎をわななかせながら。
 ペニスはめいっぱいに達していた。
 弟のものよりもいくぶん小さいながらも懸命に、腹に付くほどに勃ち上がり、ひゅくひゅくと痙攣する。透明な蜜をだけをぱたぱたと零しながら。
 成熟を迎えない小悪魔は吐精を知らない。熱を吐き出し、失うことが出来ない。性感の甘ったるい電流は未熟な体躯の内を駆け巡る。雷撃に打たれたように全身を激しく痙攣させながら、終わらない絶頂を浴せられ続ける。
 茂夫は愉悦に浸っていた。魔族の身体は現し世のひとよりずっと丈夫。壊されかける苦痛ですらも悦楽としてむしゃぶり、求めて止まない。
 だが、まだ足りない。こんなに浅い快楽ではもの足りないのだ。ちいさなあばらの内では淫悦を貪る悪魔の血を、常しえに幼さを残すままの体躯へと覚えこまされた期待に沸かせてどくどくと、暴れるほどに脈打っていた。
「り、つ」
 とびきりに甘美な痛みにか細い気道は狂ったように痙攣して、弟の名すら思うさまに呼びかけられない。そろって向けられた厚ぼったい双つの三角耳が、金色に輝く瞳が、茂夫を待ちわびていた。腰が、止まる。嵌まり込んだ肉瘤に引きちぎれるほど広げられた肉の輪が、まだ口ざみしいと言わんばかりにきゅう、と締まる。
 茂夫は知っている。最愛のけだものとのほんとうの肉宴はここから始まる。
 だから僕が言わなくちゃならないんだ。
 健気に、従順に待てを続ける、愛おしい獣へ。

「よし」

 しかし、律はすぐには動かない。浅く息を吸って、吐く。なお兄を気遣おうとする、かしこくてかわいい弟だった。なけなしの理性を懸命に保とうとする弟が愛おしくって、たまらなく、興奮する。待ちぼうけを食わされていた最奥がひく、ひく、と浅ましく収斂するのが分かってしまって、そんないやらしい自身の身体にすら茂夫は、興奮した。
 狼男のものが、再び入ってくる。射精する前よりもずっと太く、そして長く怒張した肉棒がずりずりと、やわ襞を掻きむしりながら奥へと迫る。

 茂夫はヒ、と息を詰めた。
 ぶつかった。もっとも弱い茂夫のなかみ。行き止まりであり、もっとも深い入り口へ。獣の尖った鈴口が宛てがわれる。だいじな粘膜と粘膜とが、子供じみた接吻のようにちゅう、と吸い合う。かわいい獣は最後のひと押しを求めてくる。
「にいさん、入るよ」
 小悪魔は微笑む。靭やかに伸びた、ビロードの光沢をもつ悪魔の尾の先でもって繋がった部分をそう、と撫ぜた。撫でたままの尾をゆらりと掲げ、弟の鼻先へと捧げる。律は怪訝そうにけものの耳をぱた、と寝かせた。らしくもなく考えの回らないらしい弟へ、誘うように、淫靡に尾をくねらせた。

 律の顔が強張る。その意図に気づいてしまった。尾の先にすくい取られたのは自身の放った精と兄の腸液と、兄の、悪魔の血液であった。
 ためらうような視線をちらと投げかける。兄は、天使にも見紛うような穏やかな微笑みを頑なに崩さないまま、血の赤に輝く瞳をじぃっと、まっすぐに返すばかりだった。きっとそれだけで十分だと、この兄は心得ているのだ。
 律は飲んだこともない、葡萄酒に満たされたゴブレットを賜るよう、うやうやしく尾に肉球を添える。薄く目を閉じる。意を決して、液面のほんの薄い部分だけを啜るよう、口に含んだ。
 鋭敏な狼の嗅覚は鉄さびの存在を声高に訴えたが、舌に載せたそれはほとんど味がしない。それほどのごく少量の血液だった。
 やや遅れて世界が歪んだ。次いで、灼熱に包まれる。身体が熱い。息が、出来ない。ガチガチと打ち鳴らされた牙の隙間よりだらりと垂らされた舌からは、はしたなく唾液が零れてしまう。ただでさえハロィンの夜に昂ぶりきった野獣の欲が、限界にまで引き上げられる。
 そうして律は、ようやく理性を手放した。
 
「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁァァーーーーーーーーー♡♡♡」
 茂夫は叫んだ。触れることなど敵わないはずの秘められた場所が、最奥の最後の性感帯が乱暴にこじ開けられる衝撃に、喉を潰して叫びを上げた。
 息付く間もなく抽送が開始される。ごつごつと内側からぶつけられる瘤に外の入り口を殴りつけられる。ごく僅かな可動域で繰り返されるピストンは、最奥をじかに抉る。陰茎を結腸内に埋めたまま、削り取ろうとするほどにズポズポと擦り上げた。
「お゛っ♡ ぁぅ、…………うっっぁ、あ゛あ゛♡♡ が、ぁ゛、お゛ぁ゛♡」
 与えられる衝撃がそのまま声帯を突き抜ける。肉欲に濁ったボーイソプラノはもう、本人の耳にすら届いていないだろう。
「あっ♡ も、…………だぁーぁ……! お゛お゛っ♡♡ やめぇ゛、♡ や、……らぁ゛ぁ゛♡♡」
 茂夫は制止を口にする。だがもはや、律には届くはずもない。
 だってそうさせたのは他でもない、茂夫なのだから。
 茂夫とて止めて欲しいとは思っていない。ただ、何も考えていなかった。愛しい弟が、全てを手放して茂夫を欲して愛してくれることしかわからない。
 律の方こそ小悪魔の血にあてられたばかりではない。奥の入口が律の自身にずっぽりと吸い付いてちゅぷちゅぷと、扱き上げる。そうして精を絞るように奥へ、奥へと蠕動するのにすっかり魅了されていた。獣の耳は兄の細い腹の奥で自身の放った大量の濃い精液と空気とが混ざり、合わさり、泡立てられてぐぽぐぽと、はしたない音を立てるのすら拾い上げる。
 今にも砕けて、蕩け落ちそうな腰を一心不乱に打ち付けることでしか自身を繋ぎ留められそうにないような。不安定で、はちきれてしまいそうな快楽に溺れていた。自ら進んで溺れに入った。だって杯に口をつけたのは、確かに律の意志だった。

 突然に、抽送が止む。茂夫の視界が反転する。繋がったままでひっくり返された下半身は狼男の頑丈な両の手で高々と持ち上げられる。胸より下をマットレスへ預けて這いつくばり、尻だけが自然と高く上げられる格好だ。
 ドギースタイル。本気で雌腹を犯すため、もっとも効率よく精液を送り込む野獣じみた体位。本能任せの体位変換は茂夫に追い打ちをかけてゆく。とめどなく注がれ続ける精液が身体の奥底に染み込む。熱くって苦しいのに、途方もなく気持ちが良い。
 雌の性感に醒まされた身体が野獣の精液を貪る。馬鹿になってしまったように直腸が、いや、弟のためだけに仕立てられた膣孔が攣れる。揺さぶられる脳が甘く痺れて、たまらない。
「あ゛!っは、ぁ、………お゛…………ぁっ♡………………」
 許容を超えた悦楽が茂夫のシナプスを焼き切る。心地よい。ひたすらに、気持ちがいい。多幸感。耐えきれないほどの多幸感が茂夫を支配する。蹂躙する。
 小悪魔の意識はどんなお菓子よりもあまくって幸せな、夢の中へと堕ちていった。

 狼男は慎重に、兄のなかから自身を引き抜く。精を吐き尽くしていくらか収まったとは言え、未だに収まりきらず怒張を残したままの瘤は、ぱつん、と間の抜けた音を立てて抜けた。
 まろい尻たぶを掌の肉球で包み込み、間違っても鉤爪をかけぬよう細心の注意を払って、広げる。長いこと若狼の巨大な瘤を咥えこまされた後孔は呆けたように緩んでしまっていた。
 律は凝視する。ちぎってしまった粘膜には傷跡一つ残っていないことを確認してほっと胸をなでおろす。小悪魔の再生力をどんなに分かっていたとしても、兄が血を流すことは耐え難く慣れないものだ。
 わずかな刺激に、あれだけ奥へ、奥へと注いだはずの精液がごぽり、と音を立てて流れ出てきた。ツン、と鼻奥に刺さる情事の残り香に釘付けにされる。知らぬ間に尻を掴む手に力が入ったことにも気づかずに。
「んぅぅ……」
 鼻にかかった声が降ってくる。次いで意図を持って内腿が閉じられた。目をこすりながら唸る茂夫へ、律は慌てて声をかけた。
「ごめん兄さん、起こしちゃった?」
「んーん、だいじょぶ」
 そう言いながら起こしかけた上体はぼすん、とマットレスへと沈んでいった。どうにか起き上がろうとじたばたともがくたび、小さな蝙蝠羽がはたはたと揺れるのが何だか可笑しくて律はくすり、と笑みをこぼした。
「兄さんはもうすこし、休んでて。片付けは僕がしておくから」
「いや、いいよ………」
 眠気の取れてきたらしい兄はややはっきりとした口調で拒否を示した。まだ身体を動かすのは無理であるとさすがに判断したらしい、魔力を纏う羽を広げて浮力を得て、ふわりと空へ舞い、ひとつ宙返りをしてこちらを向いた。
 
「まだ、収まりきってないんだね」
「や……!」
 陰茎をまじまじと見つめて感想を言われる。
「見ないでって言ってる、でしょ……」
 未だ鞘に収まりきらない陰茎は根本から先っぽまでむき出しの粘膜で赤黒く、グロテスクを覚える。
 律は赤面した。大きな前足で股間を覆い、じり、とわずかに後ずさった。
「どうして?」
「気持ち悪い、でしょ」
「律の立派で羨ましいけどな。僕なんてせーしも出ないのに……」
「そんな、僕のなんて色も形も気持ち悪くて……。兄さんの、すべすべでもちもちできれいだよ」

 焦った返答を兄は聞いているのかいないのか。無言のまま律の股間の元へ、腹ばいにベッドへと降り立つ。獣の鉤爪のひと掻きで五本ともいっぺんに落とされてしまいそうな細指が前足にかけられて、チェス盤のポーンでも奪うような気軽さでひょいと退けられた。
 まさか。そう思う間も与えられず亀頭が飲み込まれる。
 温かく湿った二枚の粘膜にぴったり挟んでザラザラとした舌を生き物のように蠢かせて。わざとやっているのか、じゅるるとはしたない水音を立てて。凶悪な獣根は小さな口腔をあっという間に満たしてしまう。喉の壁にぶち当たるギリギリまで、ズッポリと咥え込む。
 律は腰を震わせた。強烈に中心を吸い上げられる刺激に下半身がかくかくと揺れる。尿道に残された子種の一匹までが強引に吸い取られる。
 さんざに果てた後の性器に不意に加えられた強すぎる快感に、律は理解の追いつかないまま声を上げた。
「ちょ、ちょっと!何してるの」
 ちゅむ、と可愛らしい音を立て、唇が離される。
 溢れた唾液と生理的に浮かんだ涙でべしょべしょに穢れた表情の乏しい顔に、むっすりと怒りが滲むようにみえるのは気のせいか、それとも。
「フェラチオだよ」
「そうじゃなくて!やめてよ、また、勃っちゃうから」
「え、もうお終いなの?」
「……っ!」
「せっかくのハロウィンなのに」
 悪魔は嗤う。硬い芯を取り戻しつつ有る雄のものへ細指を絡めて、舌先からつぅ、と唾液をひとすじ垂らす。それはまるで自分だけの獲物へとマーキングをするようで。
「僕は律のちんちん、大好きだよ?」
 狼も笑う。その額には冷や汗を浮かべながら。愚直な獣性にそそのかされるまま舌なめずりをひとつ、した。

 今宵はハロウィン。魔界も現し世もちょっぴり心が躍る夜。
 魔族兄弟のハロウィンはまだまだ、終わりそうにないらしい。